#5 日常的に心を整えるメディテーション(後編)
鎌倉在住でネイチャーセラピストとして活動する内藤記世さんのコラム。自然や生命の力にふれながら生きる心地よさを伝えてくれます。連載第5回のテーマは、メディテーション・後編。「姿勢」と「環境」を学んだ前編につづき、後編では、身体と心が落ち着く「呼吸」と「意識」の整え方を教えてもらいました。
前編はこちら▶ #4 日常的に心を整えるメディテーション(前編)
呼吸は、身体と心をつなぐ
▲自然の中で深呼吸すると、空気が新鮮で何倍も気持ちいい
前編では、メディテーションでの姿勢や環境のお話を書きましたが、後編では、実際に行っていくうえでの大事なポイントを書いていこうと思います。まず、ひとつめは呼吸です。
呼吸は、生きている以上、意識をしなくてもしているものだと思いますが、ふだんから気をつけていないと呼吸が浅くなっていることがよくあります。浅い呼吸だと、酸素が全身に届きにくく、頭にだけ意識がいきやすくなります。
また、直前までとても忙しくしていたり、頭をフル回転させていたりすると、身体と心の〝意識の方向〟がバラバラになっていることも。自分の身体と心をつなぎ、同じ方向に意識を向かわせるために呼吸はとても重要な役割を担っています。まずは深い呼吸で身体と心を落ち着かせていきましょう。
How to 深呼吸
▲呼吸のイメージを図にしてみました。鼻から吸って、胸~胃~丹田と意識していきます
さて、それでは呼吸の仕方に入っていきます。世の中にはいろいろな呼吸法がありますが、今日は私がいつもやっている呼吸法のひとつをプロセスでお伝えします。
1.口から長く息を吐ききります。
1回で吐ききれなかったと感じるときは、数回やってもOKです。
2.鼻からゆっくり大きく息を吸って、鼻からゆっくり息を吐く“鼻鼻”呼吸を繰り返します。
まずは鼻から吸った空気を胸に充満させるイメージで。吐くときは、空気が胸から鼻を通るのを意識しながら、外に出します。
3.胸で呼吸をするのに慣れてきたら、次はお腹を意識。空気が鼻から胸を通り、胃のあたりがふくらむようなイメージで吸い込みましょう。息を吐き出すときは、胃から胸を通って鼻へ流れていくように。
4.最後は、おへそ〜丹田(おへそから手の指4本分下くらい)のあたりで、同様に鼻鼻呼吸を繰り返します。
ふだんから腹式呼吸に慣れている方は、胸の呼吸を飛ばしてもよいかと思いますし、その時のご自身のコンディションでカスタマイズしてみてください。身体の中で滞りが気になる場所があれば、同じようにそこに息を送るイメージをしてみてください。
5.身体に酸素が行き届いたな、心が落ち着いてきたな、と思ったら呼吸から意識をはずし、いつもの呼吸に戻します。そして、意識を「いま、ここ」に集中させていきます。
意識のおき方を練習しよう
▲大地にじかに座ると、地球のエネルギーをさらに感じます
メディテーションで大事なポイント、ふたつめは意識です。
さまざまな意識のおき方がある中で、『いま、ここに集中する』と『心の中で想像したイメージに入る』のふたつが初心者の方には始めやすいと思うので、今回はこれについてご説明します。
「いま、ここ」に集中するとは、読んで字の如く、いまこの瞬間に意識をおくということです。ただ、これがなかなか難しく、この後の予定なんだったかな?、さっきのあれ忘れないようにしなきゃ、と、過去や未来のことに意識が飛んでしまいます。でも、大丈夫です。初めはそんなものですし、毎日やっている私も、頭から気になりごとが全然離れないときがあります。
過去や未来のことに意識が飛んでしまったときは「あ!いま違うこと考えていた」と気づき、深い呼吸をし直して意識を「いま、ここ」に戻す、を繰り返し行いましょう。
どうしても難しい方は、ご自身の身体の感覚や五感に意識を向けてみてください。頭、首、肩、背中、胸、お腹、手、足とひとつずつていねいに観察してみます。今、この瞬間の身体の各部位がどんな様子か、軽いのか重いのか、詰まっている感じがするのか流れている感じがするのか、意識を向けにくい部分があるのかなど、ただただ観察してみてください。
身体の観察がすんだら、五感にも意識を向けてみてください。こちらも、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、視覚と感覚器官をひとつずつ観察します。やり方は簡単です。
まず聴覚に意識を向け、耳から聞こえてくる音だけに1、2分でいいので集中します。次に、どんな匂いがするのか、と嗅覚だけに集中します。このようにひとつの感覚器官にだけ集中する時間をつくってみてください。味覚なら、横にコップ1杯の水をおいておき、それをゆっくり時間をかけて味わってみたり。視覚は、メディテーション前とメディテーション後で、見える色味や彩度や視野の広さなどの感覚の差異を感じてみてください。
▲好きな場所や空想の風景の中にいる自分をイメージ
そして、もうひとつの心の中で想像したイメージに入る方法は、イマジネーションが得意な方にはとてもおすすめです。
ご自身の好きな場所の風景(空想の風景でも構いません。むしろ私は空想の風景を想像することが多いです)を思い出して、そこでリラックスしている自分や心地よさを感じている自分を想像し、その瞬間に意識を向けてみてください。そのときの感覚を味わってから、目を開けると穏やかな気持ちになっていたり身体がスッキリしていたりします(感覚には個人差があります)。
私はこのイメージワークを深い呼吸とあわせて取り入れています。前編の姿勢についての解説では、頭から地面まで一本線が通っているような…と書きましたが、その地面の先からさらに地球の中心部にまで続いている様子をイメージしています。自分の頭からお尻〜地球の中心部が一本線でつながっている感じです。このイメージで、地球から新鮮な空気を身体に吸い込み、身体から地球へ空気を吐き出す…という呼吸を行っています。慣れてきたらぜひ試してみてください。
メディテーション後の変化
▲メディテーション後、目を開けると色味が濃く鮮やかに見えることも
最後に…「メディテーションをしたらどうなるの?」という方もいると思うので、私自身が続けてきた経験からの体感をお伝えします。体感は、人それぞれ違いますし、その日のコンディションでも違うので、あくまでも参考としてみてください。
・モヤモヤしていた心がすっきりする
・考えすぎていた思考がシンプルになる
・アイデアやビジョンが浮かぶ
・前向きになれる
・焦りがなくなる
・身体が軽くなる
・固執していた考えが緩まる
・ただただ気持ちいい
・心が穏やかになる
・小さい幸せに気づき、感謝の気持ちがわく
・見える景色がいつもより美しくみえる
・切り替えができる
など…
すべてを言い表すことは難しいのですが、共通しているのはブレていた自分の軸が戻るという感じでしょうか。特に始めた当初は、なかなか効果も感じられなかったりすると思いますが、すぐに大きな変化が起きるものではありませんので安心してください。
落ち込んだり悩んだり、怒ったりと心がブレることはあると思いますが、ブレることがダメなことではなく、そんな自分も認め、日々、心身と向き合いながらコツコツとブレては整え、ブレては整えてをくり返し、毎日を少しでも心安らかに心豊かに過ごしていけたらいいですよね。メディテーションでみなさんの心身が今よりも軽くなりますように。
これまでの連載はこちら▶森と海と心のいい関係
内藤記世 Naito Kiyo
大阪生まれ。世界遺産「高野山」に近く山深い和歌山県と大阪府の県境で育つ。大学卒業後、就職で東京へ。リクルートコミュニケーションズで広告制作ディレクションに携わった後、ロンドン留学。帰国後は、DIESELの広報宣伝部を経てフリーランスとなる。現在は、鎌倉に暮らし、Nature evangelist (ネイチャーエバンジェリスト)、森林セラピーガイドとして活動中。@kiyorin_n
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