#4 嬉し悩まし、間取り計画(後編)

こんにちは、ライターの二木薫です。このブログでは、夫婦ふたりで東京から鎌倉に引っ越し、「この町で理想の家を建てよう」と奮闘する記録を綴っていきます。「鎌倉が好き」「鎌倉に住んでみたい」という人に向けてというだけでなく、理想の暮らしや家づくりについても皆さんと一緒に考えていけたらな、と思っています。

第4回は、暮らし上手な海街の人々から学んだ遊び心や、湿気対策について。

海街暮らしの「工夫と遊び心」

さて、暮らしやすさを追求した「嬉し悩まし、間取り計画(前編)」に続き、後編では鎌倉の家ならではのこだわりについてもお話ししたいと思います。

我が家の特徴にもなっているのは下記の2点。

①家の外にシャワーを設置。玄関からSIC(シューズインクローゼット)、WIC(ウォークインクローゼット)、浴室へと回遊できる間取り

海に近い立地のため、マリンスポーツや海散歩を考慮しての間取りです。砂や潮を外付けのシャワーで洗い流し、すぐに着替えたりお風呂に入れるようにしました。


▲身近に海がある暮らし。ビーチに行かなくても、道を歩くだけで砂だらけになることも

特に、砂は大敵です。前の家では玄関だけでなく、リビングやダイニングにも砂が侵入。フローリング板の隙間や、幅木など、入り込むとなかなか取れないやっかいもの。

その経験をふまえて、1階は寝室以外、すべて土間床です。海帰りで床が濡れても気にならず、家の中が砂っぽいかも......と感じたら、ホウキでさっと払える手軽さ。ご自身もサーファーで湘南にお住まいの建築士さんからも、お墨付きの使い勝手です。

 

②1階の玄関ホールを広くとってストーブやソファを置き、多目的スペースとして活用

深夜営業のお店が少ない、日中の観光渋滞を避けたいなど、土地ならではの要因もあり、夜も昼もおうち時間を大切にしている人が多い、という印象の鎌倉。楽しんだり、くつろぐ空間づくりが上手で、我が家もそんな「遊び心」を取り入れてみました。

玄関から続く8畳ほどの土間ホールでは、火を眺めてのんびり......。世の中が落ち着いた後は友人を招いたり、少人数のサロンやイベント用に使っても面白そうです。


ペレットストーブを見学しに、厚木のVancouver coffeeへ。土間とストーブの相性を確信

薪ストーブはハードルが高かったので、操作性がよく燃料の管理も簡単なペレットストーブを検討し、イタリアのRavelli社のAria(アリア)に決定。温風が出るのではなく、本体から熱をじんわり発散する自然対流型です。このストーブの周りで、いい時間を紡ぐ日を楽しみにしています。

 

念には念を、鎌倉の湿気対策

こだわりのポイントは人それぞれですが、鎌倉の家づくりでの失敗を防ぐには、なんといっても「湿気対策」! 移住して一番驚いたのは、湿気とカビの問題です。革製品や木工製品は見るも無残な姿になり、あわてて除湿機を購入しました。


▲海だけではなく、山からの湿気も。東京の生活からは想像以上の対策が必要でした

今回の家づくりでは、設計士さんに初めから湿気対策を依頼しました。この家で湿気がたまりそうな部分は、1階の浴室まわり。1階各部屋に湿度センサー付き換気扇を設置し、設定した湿度以上になると、換気扇が自動で強になるように。脱衣所にはエアコンも付けて、浴室とそこから続くWIC、SICまで一気に除湿することにしています。

また、風通しが重要かと思っていたのですが、機密性の高い現代の建築では窓が無いほうがかえって湿気ないとのこと。WIC、SICには、あえて窓を設けませんでした。勉強になりました!


▲利便性だけでなく、土地の特徴も考慮した間取りで、おうち時間を快適に
 

暮らしを豊かにする種を探す

人それぞれの暮らしに合わせて間取りを自由に設計できる、これこそ注文住宅の醍醐味ですね。自由だからこそ「失敗したくない」、そして「せっかくだから、こだわりたい」という贅沢な悩みも生まれます。それだけに、自分の暮らしの「NEEDS」と「WANTS」をつきつめて考えてみるいい機会ではないでしょうか。

失敗したくない点や利便性については、家づくりのプロや先輩に相談するのもいいですね。我が家は施工会社の過去の建築例や、鎌倉在住の友人のお家を参考にさせてもらったり、Instagramやインターネットでも情報収集しました。

こだわりのほうは、歯止めなく追求すると迷走する危険性もあるので、ほどほどに、ですね。ただ、「WANTS」がたくさんの家は、その人らしい面白い日々を過ごせそうな気がしませんか? 暮らしを豊かにする種は、利便さ・快適さ以外にもたっぷりあるような気がしています。


▲模型の2階キッチンから、吹き抜けの土間ホールをのぞむ。南面の借景と、ストーブが見える特等席です

さて、次回は着工前の『地鎮祭』について。一体何をする儀式なのか、何が必要なのか......? ドタバタの初体験をレポートしたいと思います。

(つづく)

 

これまでの連載はこちら▶海街で家づくり

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

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