#2 土地選びにまつわるエトセトラ

こんにちは、ライターの二木薫です。このブログでは、夫婦ふたりで東京から鎌倉に引っ越し、「この町で理想の家を建てよう」と奮闘する記録を綴っていきます。「鎌倉が好き」「鎌倉に住んでみたい」という人に向けてというだけでなく、理想の暮らしや家づくりについても皆さんと一緒に考えていけたらな、と思っています。

第2回は、ブラブラ歩いていたら、運命の土地に出会ってしまったお話。

第1回はこちら
#1 40代からはじめる、わたしらしい暮らし

 

土地選びは「偶然」もひとつの決め手?

さて、憧れの鎌倉暮らしをしつつも、在宅勤務がきっかけで住空間を見直した二木家。新しい家の第一条件は、夫婦それぞれの仕事スペースの確保です。

まずは湘南地域の中古・新築物件をターゲットに、不動産会社を訪ねたり、インターネットを検索します。ところが、新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに湘南移住者が増えて、よい物件はあっという間に売れていってしまいます。やるせない気持ちにかられ、深夜のおやつが増えてしまったのは言うまでもありません。

3ヶ月ほどたったある日のこと。犬の散歩をしていると、普段は曲がらない小道へ入りたがります。仕方なしについていってみると、そこには空き地がありました。南側は隣地の庭になっていて、豊かな緑のきれいな整形地。もともと土地を購入して家を建てる、という選択肢は考えていませんでしたが、窓から樹木が見える家に憧れていた私は、思わず「これだ......」と目からウロコの思いでした。


▲南の大きな窓から木漏れ日......憧れの家のイメージにぴったり! 絶賛妄想中

空き地には看板も出ていなかったのですが、鎌倉駅前の不動産屋さんに調べてもらったところ、ちょうど売却中とのこと。希望の地域で中古や新築物件を見つけられなかった中で、散歩中のこの出会いは運命のように感じたのです。
予算は厳しいものの、夫婦一致で購入を決めたのでした。


▲犬も歩けば...... 導かれるように気になる土地を発見し購入。想定外の家づくりがはじまります

 

土地購入の前に知っておきたい3つのこと

土地を買う。これほどまでに緊張した買いものが、かつてあったでしょうか。経済的なことだけでなく、「簡単には手放せない、ここに身を据えるんだ」という心理的なプレッシャーもあります。

ご参考までに、土地を購入する前に知っておいてよかったことを書いておきますね。

1.エリア情報
交通の便、病院やスーパーなどの近隣施設、自治体のルールや補助制度、お子さんがいる人は学校関連の情報も。海、山に囲まれた鎌倉では、ハザードマップや避難経路の確認も大事です。
上記については、もともと近くに住んでいたため、事前に把握できていることもメリットでした。

2.敷地条件、規制
土地の形、地盤、建ぺい率、容積率以外の部分もチェック。風致地区、防火地区、高さ制限、斜線制限など、法律や都市計画法の規制があります。
おうちって色々な条件のもとで建てられているんだなー、と勉強になりました。建物面積や屋根、窓、外壁デザインに影響するので、詳細に見ておいてよかったポイントです。

3.土地のデメリット
土地は、全ての条件が叶う場合のほうが少ないものだそう。デメリットも冷静に見極めることが大事ですね。
この土地ですと、前面道路が私道、幅が狭く、家の前まで車が入れません。入り組んだ路地の多い鎌倉ではあるあるの事例です。駐車場の確保や工運搬費など、狭小道路のために発生する費用は、事前に予算に組み込んで計画しました。


▲土地にまつわる条件、エリアの特徴や暮らしやすさを事前に知ることは、家づくりをする上で大きなメリットになりました

歴史の町ならでは、「埋蔵文化財包蔵地」とは……

さて、鎌倉で土地を買う場合、もうひとつ大事な確認事項があります。それは該当地が「史跡または埋蔵文化財包蔵地」かどうか。

歴史深い町なので、文化財が埋まっている可能性があるんですね。ロマンチック!と喜んでばかりではいられません。「埋蔵文化財包蔵地」に家を建てると、土地の場所や一定以上の採掘の深さによって、行政から試掘調査が求められます。

▲遺跡が発見されると概要図も変化するそう。必ずアップデートされたものを確認します。(鎌倉市教育委員会文化財部文化財課「鎌倉市の史跡・包蔵地概要図」より)https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/todokede_sinnsei.html

 

我が家はスバリ「埋蔵文化財包蔵地」でした。 試掘調査や発掘調査になれば、建築がストップし、時間もお金もかかってしまうので、できれば避けたいもの。

そのため、施工会社選びは鎌倉での建築実績の多い会社に絞り、アドバイスをいただきながら、問題なく建築計画を進めることができました。「埋蔵文化財包蔵地」に建築する場合は、該当地での建築や行政への申請に慣れている施工会社がおすすめですよ。

 

敷地の中も外も、大切な場所

「土地購入も施工も、鎌倉をよく知る業者さんにお願いしてよかったね。」これは、夫婦で何度も交わした会話です。

都市部に比べてご近所づきあいが残っていることも、鎌倉の特徴。エリア事情に詳しい不動産屋さんから、周りは高齢世帯が多いことや以前に建築トラブルがあったことを聞き、近隣へは早い段階でご挨拶し、説明やご相談などをさせてもらいました。施工をお願いしたエンケルヒュースさんも、住民同士の関係性をとても丁寧に考えてくれるので、安心してお任せすることができました。


▲家はまちの一部でもある。皆んなで暮らしているんだよね、リスさん。

「楽しんでいい家建ててね。」建築前の土地を訪れると、裏のお父さんが声をかけてくれました。鎌倉では、環境の豊かさや近隣やまちとのつながり、その全てを大切に思いながら暮らす人が多い。都心で育ち、マンション住まいに慣れていた私は、境界線を引いた敷地の中だけの営みを、暮らしとして捉えていたかもしれません。

家づくりのはじまりに、小さいけれどよい気づきを得ることができました。しかし、これは嵐の前の静けさ。この後、二木家は暗澹たる「間取り迷子」におちいるのです......。
(つづく)

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

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