GOKOTI平山遥さんおいしい旅の記憶

これまで国内47都道府県・世界40か国を訪れ、食べて、語らって、その土地の暮らしに触れながら、旅をしてきた平山遥さんのコラム。連載第8回は、ユーラシア大陸、西の果ての地ポルトガルへ! 実は世界で一番有名なかの魔法学校が生まれた地でもあるのだとか…!

あの魔法学校が生まれた「ポルト」は、夢心地マジックをかける濃甘な港街でした。

プロローグ 〜世界中のセレブが移住を求める国「ポルトガル」に、私も呼ばれました〜

ここ数年ポルトガルは、観光客だけでなく、海外の富裕層のあいだで移住する人が増えているってご存知ですか? 移住人気のおもな理由は、「欧州のなかで比較的物価が低いこと」「温暖な気候で暮らしやすい環境であること」「(日本よりも)安全とされる国※であること」らしいんです。

2019年5月私も「ポルトガル」に呼ばれて、両親と訪れることになりました。今回は、おとなをとろけさせる都市「ポルト」でのおいしい旅をご紹介します。

※2021年の「最も平和で安全な国ランキング」(Global Peace Index2021)で、ポルトガルは世界ランク4位(日本は12位)!


▲ポルトの街並みは、歩いているだけでときめきが止まりません。

オレンジ屋根とアズレージョの青い文様が広がる街。絵画の一部になった気分です。

ポートワインの積出港として有名な、ポルトガル第二の都市「ポルト」。かわいらしさは名前だけじゃありません。ドウロ川を挟んでオレンジ屋根とポップカラーウォールの家々が立ち並ぶ風景は、まるで中世絵画の世界です。教会や大聖堂などが点在する歴史地区の散策も情緒があります。ポルトガルの代名詞であり、青と白の味わい深いタイル装飾「アズレージョ」にも、街のいたるところで出会うことができます。まさに、視覚で幸せにしてくれる街なんです。


▲カラフルでお洒落なカフェやレストランで賑わうリベイラ地区。

▲ポルト最古の教会「ポルト大聖堂」の回廊。アズレージョの壁がなんとも美しいです。


世界いち美しい本屋さん「レロ書店」の扉を開けば、ファンタジーが始まります。


▲小ぶりな建物でありながら、メルヘンな佇まいで存在感がある書店。

世界遺産に登録されている歴史地区の一角に、多国籍な行列ができています。この光景を見つけたら、きっと脈が早くなる、あるいは鼻息あらくなる症状が出てしまうでしょう。特にハリーポッターファンのみなさまはご注意を(笑)。

ここは、世界で最も美しい書店とも称される「レロ書店」。

ハリポッターシリーズの原作者、J・Kローリングが、英語教師としてポルトに赴任していた頃によく通い、第1作〜第3作までをポルトで執筆したことから、ハリー・ポッターの世界観に影響を与えたという噂が広まり、瞬く間に有名になった書店です。真相は定かでありませんが、全シリーズをリピート鑑賞して呪文も覚えているハリポタファンのひとりとして、ここに来ないわけにはいきませんでした。


▲すぐ目に飛び込んでくる螺旋階段(通称「天国への階段」)にはうっとりします。

扉が開いた瞬間から、ファンタジーは始まります。エントランスのスタッフがマントを羽織って出迎えてくれますし、店内のシンボルである曲線美が素晴らしい螺旋階段は、あのホグワーツ魔法学校の動く階段を彷彿とさせます。天井や壁の彫刻や装飾も芸術的で、本屋さんというより、美術館と表現したほうがしっくりくる非日常の世界。

内装ばかりがフィーチャーにされがちですが、天井までぎっしり並べられた本もユーモア溢れるあるものばかりで読み応えがあります。世界中で知られる童話たちも、この本屋のマジックによって、とっても可愛らしいカバーをまとっていました。ハリポタファンでなくても、間違いなく高揚してしまう本屋です。


▲2階の天井には陽光が降り注ぐ巨大ステンドグラスが、華を添えています。

▲ハリポタファンのために用意されたコーナーをみて、興奮状態に(笑)。

 

「ポルトガルの宝石」。それは、芳醇だけを抽出し、おとなを甘やかす「飲むアロマ」。

ドウロ川南岸にあるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区は、たくさんのワイナリーが立ち並ぶ、ワイン好きにとって天国のようなエリアです。

ちなみにポートワインとは、ポルト近郊のドウロ渓谷と呼ばれる場所で収穫されたぶどうのみを使い、厳しい条件のもと熟成させたワインのこと。発酵中にブランデーを加えて発酵を止めるという独特な製法で、通常のワインよりも甘さが引き立つのが特徴です。


▲ドン・ルイス1世橋から見ると、ワイナリーが軒を連ねているのがよくわかります。

数あるワイナリーのなかから直感で選んだのは、見学や試飲ができる最古のワイナリー「TAYLOR’S(テイラーズ)」。石畳の坂をひたすら歩き、後悔の念がよぎったところで、ようやく丘の上に姿を現しました。

ワイナリーの敷地内に一歩入ったら終始浮かれっぱなし。日本語の音声ガイドでポートワインの歴史や製法を聞きながら見学するも、ワイナリーじゅうに漂う芳醇な香りが誘惑してきて、あまり頭に入ってきませんでした(笑)。


▲貴族の紋章のようなロゴが、「TAYLOR’S(テイラーズ)」入り口の目印。

見学ツアーのフィナーレは、併設レストランでのテイスティングです。10年以上寝かせた赤ワイン「Vintages」と「Chip Dry」という爽やかな白ワインの2種類を堪能しました。

香り高くて、濃厚な甘さがあって、コクもあって。おいしいという言葉では足りない芳醇なぶどう酒に、両親も大喜び。好きなものが大切な人を笑顔にして、それを見て嬉しくなる。「しあわせの乗算」という名の魔法にかかったような、至福のひとときでした。


▲ぶどうの甘いフローラルな香りと樽の香ばしさが充満する樽ロードは、歩くだけで夢見心地に。 


▲香りを嗅ぎ比べできる体験も。比較することでそれぞれの個性が際立って感じられます。


▲「ポルトガルの宝石」と呼ばれるのも納得できる、美しい色合いにもほれぼれ。


エピローグ 〜ポートワインが家族にかけた魔法は、色褪せることがありません〜

家族集まって食事をするたび、とりわけワインを飲むときには、ポルトで過ごしたときの話になります。おとなを愉しませてくれる港街には、また訪れたいと思わせる魅力に溢れていました。移住したくなる人の気持ち、今なら強く共感できます。

▲試飲だけじゃ物足りず追加注文した様子(笑)。ワイン党ファミリーご満悦。

 

これまでの連載はこちら▶おいしい旅の記憶


平山 遥 Hirayama Haruka
カナダ・トロント生まれ、東京育ち。数年前から鎌倉暮らし。リクルートコミュニケーションズで、広告制作ディレクション・WEBマーケティング・サービスデザインの領域に従事。現在はコンサルタント業を中心に、フードコーディネートアシスタントとして奮闘中。週末の海辺散歩、月に1度の国内旅行、年に1回の海外旅行でリトリートするライフスタイルを満喫しています。Instagram:@travelife_haruka0530

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