#3 ウブドの深緑、滝水、香辛料。こころに効く天然サプリ【後編:料理教室】
これまで国内46都道府県・世界40か国を訪れ、食べて、語らって、その土地の暮らしに触れながら、旅をしてきた平山遥さんのコラム。気軽に出かけられないときでも、いつか行きたい憧れの場所へトリップしているかのような気持ちになれます。連載第3回は、神々が宿る島・バリの旅、後編。フレッシュなバリの食材でつくる料理教室を体験できます。
▶滝での沐浴に癒やされる前編は、こちら
調味料からつくるひと手間が愛おしい。ハーブとスパイスが効くご自愛料理
こころもカラダもリセットすると、自然とおなかがすいてきます。どうせならカラダによくて、美味しいものを堪能したいと本能が求めていたようで、突拍子もなくこんなアイデアが浮かびました。「そうだ、インドネシアの伝統料理を習ってみよう」
さっそく沐浴した翌日、仲良し夫婦が営むKetut's Bali Cooking Classに参加しました。
Ketut先生の奥さんが市場をガイド。バリでしか見られない食材や日用品などをひとつひとつ丁寧に教えてくれて、時には触って、嗅いで、かじって、食文化を体験させてくれます。まさに、ホスピタリティとエンターテイメント性が溢れる時間でした。
▲質問にもわかりやすく答えてくれて、参加者同士の会話も弾んだ市場見学
▲バリのお供え物「チャナン」。葉の器に色鮮やかな花が盛り付けられています
料理教室のスタジオは、田園風景の真ん中にぽつんと立っている家屋で、田園の匂いを運んでくるそよ風が気持ちのいい、オープンエアな空間。調理を始める前に、Ketut先生による献立紹介と食材の講義を受けました。
▲各方角を守る神様のシンボルカラーを表す食材を使うのが、バリ料理の哲学!
▲パウダーではなく、フレッシュなウコンやターメリックでの調理は初めてでした
調理で一番時間をかけたのが、「サンバル(スパイスペースト)」づくり。葉野菜・ハーブ系はみじん切りし、シード類や固めの食材はすり潰したら、これらを合わせて石臼でペースト状にしていきます。
▲大きい包丁は不慣れだったものの、手際がいいと褒められて上機嫌です(笑)
▲伝統的な調理器具を用いたペーストづくり。日本の餅つきを想起させました
シェフの陽気な笑い声が、おいしさの決めてでした
調味料づくりから始まり、蒸す・焼く・煮る・揚げる・炒める工程をひと通り行ない、計5品のフルコースを作り上げました。時間はかかりましたが、疲れを感じることは一切なくただ心が満たされる幸せな料理教室でした。頑張って手作りしたごはんの味はもちろん格別でしたが、すべての隠し味となったのは、実はKetut先生のチャーミングな人柄と笑い声だったと思っています。先生は終始ニコニコしていて、調理説明するたびに高らかに「アーハー」と笑うんです。最初はあまりにも強烈なキャラクターに驚きましたが、気づいたらみんながつられて笑顔になり、参加者同士の会話が弾み、最後の食卓を囲む時間も賑やかでした。ほっぺたが釣りそうなほど広角が上がりっぱなしの状態で、楽しく心を込めて作った料理ですから、美味しいはずです。料理がひとを幸せにする力は絶大だと強く感じました。
▲鶏肉と野菜のスパイス炒め(現地のメニュー名称は忘れました)
▲ソトアヤム(スパイスペースを使って煮込んだ鶏肉のスープ)
▲ミーゴレン(インドネシア風焼きそば)
▲ペサン・ベ・パシ(白身魚とスパイスのバナナリーフ包み)
エピローグ 〜ウブドが、「家庭料理を習う旅」の出発点に〜
沐浴を機に自分の直感や本能を開放し、その結果こころもカラダも元気になれる料理教室との出会いがあったウブド。この数日間の幸福感が忘れられなくて、私は2018年5月の旅以降、旅先で料理教室に通うのがお決まりになりました。国・地域の数だけその土地や文化を映す料理があります。これからどの国の、どんな料理を作って食べようかと考えるだけで、ワクワクしてたまりません。
▲サテ(ピーナッツソースでいただくインドネシア風串焼き)
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平山 遥 Hirayama Haruka
カナダ・トロント生まれ、東京育ち。数年前から鎌倉暮らし。リクルートコミュニケーションズで、広告制作ディレクション・WEBマーケティング・サービスデザインの領域に従事。現在はコンサルタントとバイヤーという二足のわらじに奮闘中。週末の海辺散歩、月に1度の国内旅行、年に1回の海外旅行でリトリートするライフスタイルを満喫している。Instagram:@travelife_haruka0530