#5 やってよかった!『地鎮祭』ドタバタ体験記

こんにちは、ライターの二木薫です。このブログでは、夫婦ふたりで東京から鎌倉に引っ越し、「この町で理想の家を建てよう」と奮闘する記録を綴っていきます。「鎌倉が好き」「鎌倉に住んでみたい」という人に向けてというだけでなく、理想の暮らしや家づくりについても皆さんと一緒に考えていけたらな、と思っています。

第5回は、準備不足で慌てたけれど、体験してみたらとっても素敵な行事だった『地鎮祭』のお話。

 

家づくりのはじまりの儀式

施工会社のエンケルヒュースさんと、打ち合わせを進めている時のことです。今後のスケジュールを伺っていると、『地鎮祭』という聞きなれない言葉が出てきました。希望者には『地鎮祭』の手配を行ってくれるというのです。


▲施工の流れがこちら。図の7番、着工の前で『地鎮祭』を行うことができる(エンケルヒュースHPより)


神事を執り行う杉並の『猿田彦神社』によると、

〝地鎮祭(とこしづめのまつり・ぢちんさい)とは、建物の新築、或いは各種土木業の起工に際して、その敷地の守護神を祭って、その御神徳により土地の平安堅固ならんことを祈願する儀式。〟

一般的には吉日を選び、着工する前に行われます。
『猿田彦神社』が建築関係の神事を取り扱うことが多いのは、お祀りしている猿田彦大神が「国初のみぎり天孫をこの国土に御啓行(みちひらき)になられた」として、古事記や日本書記に記されているからだそう。

近年は『地鎮祭』を省略するケースもあるそうですが、暮らす土地の神様へのご挨拶として古くから伝わる日本の慣習だと聞き、『地鎮祭』を依頼することにしました。

 

『地鎮祭』に必要な、アレがない!

着工前に行う神事があったよね......ぼんやりした認識でいたまま、気が付けば『地鎮祭』ももうすぐ。「準備って何だった? 服装は?」と急遽バタバタ。

案内のメールを再確認すると、会場設営・お供えものの準備などはすべて『猿田彦神社』さんでご用意いただけるとのこと。施主が用意するのは、謝礼として神主さんへお渡しする玉串料だけです。これは助かりますね。


▲お供えものの手配がお任せでき、大助かりでした! 海の幸、山の幸、縁起物などが並びます。エンケルヒュースさんから、お酒の差し入れもいただきました



ただ、玉串料を入れるのし袋のこと、忘れていたんですね。「近所ですぐ買えるだろう。時間もないし、直前で大丈夫ね」と油断。前日になり、念のためにと調べたところ、『地鎮祭』ののし袋は下記の通り。

【種類】
お祝い用、紅白の水引きがついたのし袋。

【水引きの結び方】
『地鎮祭』には紅白の蝶結びがよいそうです。結んだらほどけない結び切りやあわじ結びは、結婚式など1度きりが望まれる祭典用とのことでした。

【水引きのタイプ】
金額とのバランスもあり、印刷された略式のものより、取り外せるタイプが望ましいそう。

あれ、想像していたのし袋とは違う......。そしてなかなか見つかりません。コロナ禍で、お店も閉店中や早じまいのところばかり、さまよう内に『地鎮祭』前夜20時に。心が折れかけた時、きらびやかに光るイエローのネオンと、「ドンドンドン・ドンキ〜」の音色が聞こえてきました。文房具コーナーに駆け込むと、あった、やっとありました。多分、その日1番テンションが高かった客でしょう、小さくガッツポーズを決めて購入したのがこちら。なにごとも、事前の準備は大事ですね。


▲よく見かける左側は略式タイプ。右側が『地鎮祭』など、よりフォーマルなシーンで使えるのし袋。やっと買えました〜

 

『地鎮祭』当日の様子は......?

ひと安心して迎えた『地鎮祭』当日。ここでは知っておくと役に立ちそうなポイントをあげてみました。


▲祝詞をあげ、神様をお呼びしているところ。ピンとした心地よい緊張感

 

【服装】
土地柄にもよるようですが、特に正装にこだわる必要はないそうです。『地鎮祭』後にご近所への挨拶まわりを予定しているなら、カジュアルすぎないほうがいいかもしれませんね。我が家は、オフィスカジュアル程度の服装で臨みました。

【玉串料】
のし袋に入れ、儀式が終わった後に神主さんにお渡ししました。タイミングは特に決まっていないようですね。玉串料は事前にエンケルヒュースさんに確認し、40000円を用意しました。

【時間帯】
想像以上に大きな声を出すシーンがあり、『地鎮祭』のスタートを午前遅めの時間にしておいてよかったです。日頃からとても静かなエリアなので、朝一番に行っていたら気になってしまったかもしれません。

【儀式】
式次第は『地鎮祭』の当日にいただきました。儀式の作法は神主さんが教えてくれるので、前知識がなくても無事に終了できました。

特に印象に残っているのは、祭場四方に紙吹雪のような切麻(きりぬさ)を撒く『四方祓(しほうはらい)の儀』。これは祓い清めの行事で、風にハラハラ舞う様子が神秘的で敬虔な気持ちになりました。

また、『地鎮(とこしずめ)の儀』では施主も出番があり、盛った砂山に鎌や鍬を入れながら「エイ!エイ!エイ!」と発声します。エイの発声には「栄・栄える」という意味もあるそう。夫は緊張のせいか小さな可愛らしい声しか出せず、「もっと威勢よくやればよかったね〜」と笑い話になりました。


▲こちらが『地鎮祭』の式次第。施主と施工会社のエンケルヒュースさんが参加、約40分の神事でした



【お供えもの】
お供えもののうち、お酒や青果は施主がいただき、持ち帰りました。ダンボール1箱程度の大きさですが重量があったので、車で来ていて正解でした。施主が遠方から、または徒歩で『地鎮祭』に参加する場合は、どう持ち帰るかを考慮しておくといいと思います。

最後に、家内安全のお札をいただきました。「お札は神棚か、神棚が無い場合は清らかで明るい場所を選び、南または東向きにおまつりしてください。目線より少し高い位置が最適です」と、教えてもらいました。

 

土地とご縁を結び、使わせてもらう

実際に『地鎮祭』を行った感想は、夫婦一致で「やってよかった!」土地への祈りを通して、この場所にご縁を結んだ日。心に浮かんだのは、「この場所をお借りして、暮らすんだ。大切に使わなくては......」という気持ちでした。

まるで結婚式のようにひとつの節目になり、感謝と決意にあふれた時間を過ごすことができました。たくさんの人の手を借り関わりながら、土地との関係を深めていくのは、ゼロから家を建てる醍醐味なのかもしれません。

『地鎮祭』の後は、小箱に入った鎮物(しずめもの)を、お守りとして敷地に埋めてもらいます。鎮物の風習は、古墳時代までさかのぼれるほどだそう。古から続いてきた祈りの形に触れることができたのも、よい体験になりました。

『地鎮祭』帰りの打ち合わせで、エンケルヒュースさんに用意してもらった法被を着忘れたことが発覚! 残念ですが、基礎工事の後の棟上げを祝う『上棟式』で法被を着用しましょう、ということに。最後までドタバタなのが、かえって我が家らしい1日となりました。次に土地を訪れる時には、木材が組み上げられ、棟上げされる予定です。人生初めての家づくりが、いよいよ始まった実感を楽しんでいます。
(つづく)



▲思い描いた暮らしが形になっていく楽しさ。さて、どんな家ができるのでしょう......?

 

これまでの連載はこちら▶海街で家づくり

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

 

 

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