#10 番外編 憧れの庭づくり計画

こんにちは、ライターの二木薫です。夫婦ふたりで東京から鎌倉に移住し、とうとう念願の家ができあがりました。土地探しから家づくりの経過を連載してきた「海街で家づくり」、楽しんでいただけましたでしょうか。
今回は番外編、家の外部分、庭と植栽のお話です。家づくりの計画で、ついつい後回しになってしまう外構計画。案の定、想定外のことが次々と......。成功も失敗も含め、赤裸々にレポートしていきたいと思います。

 

有り?無し?庭の必要性を考える

マンションと一軒家の違いのひとつは、外構部分も自分たちで計画できること。家づくりの打ち合わせで、庭の有無について検討する機会がありました。やはり、庭のある家、憧れますよね。鎌倉や湘南エリアではBBQやアウトドアダイニングなどを楽しむ家庭も多く、そんな暮らしかたを知れば知るほど夢も広がります。

ただし、デメリットのことも考えなくてはいけません。まず、庭があれば、必然的に1階の住居面積は削られてしまいます。植栽は初期費用に加えて、高木を植えれば剪定管理コストも発生します。老後も、日々の掃除や手入れの手間をかけていけるのかも、検討すべきポイントです。

それらを踏まえた上でも、我が家の答えは「YES」。そもそも、ふたり暮らしに部屋数は必要ないと判断しました。そして、今囲まれている豊かな緑はあくまでも借景。今後を考えたら敷地内にも草木が欲しいし、暮らしの中で土を触る時間が持てることはむしろ歓迎でした。


▲南面には、植栽に囲まれた小さな庭とウッドデッキ。駐車スペースも確保

予算とスペースなどを検討し、1階に庭とウッドデッキをつくり、その代わりにベランダはつけないことに決定しました。防水処理が必要なベランダを省いたことで予算減額にもなり、一石二鳥の結果となりました。

 

事前準備で差が出る、庭ライフの充実度

庭を建築計画に組み込んだ段階で、ある程度の用途も考えておくといいと思います。例えば、日常使いの洗濯物干しから、BBQ、プール遊び、ドッグラン、野菜づくりまで、目的は様々ですよね。


▲湘南ではよく見かけるアウトドアダイニング。週末にはご招待をいただくことも

庭ライフをより充実させるためには、事前の準備がポイントとなります。照明、屋外電源、水栓の確保や位置の調整、塀の有無や高さを意識しておくと、後々とても便利ですよ。

我が家は、初期段階で照明、電源、水栓は計画していたのですが、後々、後悔ポイントも出てきました。庭ができあがってみるとウッドデッキ以外の部分に高低差があり、椅子やテーブル、植木鉢などのガーデン用品、さらには洗濯物干しスタンドが置きにくいことが判明したのです。特に洗濯物に関しては、物干し竿を吊るす設計をしていなかったため、ウッドデッキの一部と玄関ホールの土間スペースを代用してやりくりしています。
充実の庭ライフのためには、土からしっかり整地して、庭を水平に均してもらうことをおすすめします。

どこから眺めても美しい、『苔丸(こけまる)』の庭

さて、庭に高木を植えたかった我が家は今後の植栽メンテナンスを鑑み、鎌倉をメインに造園されている会社を探すことにしました。そこで、以前から「すてきだな」と気になっていた鎌倉山の『苔丸』さんに庭づくりを依頼。


▲鎌倉山まで足をのばすと、思わず目に留まる『苔丸』の外観。おとぎ話に出てきそうな雰囲気です


まずは、見取り図や現地、搬送ルートを見ていただき、希望やイメージをお伝えしました。その後、苔丸さんに植物の仮選定と確保をしてもらい、打ち合わせをしながら種類や本数を話し合います。「これは本当におすすめです」と見せていただいたのは、金沢八景の古民家からやってきた古典ツツジの本霧島。なんとも見事な枝ぶりと、年月を経た美しさです。本霧島をメインに、予算とすり合わせながら、お迎えする木々を決めていきました。


▲右手の中木が本霧島。冬にかけて少しずつ色づき、春には朱色の花に覆われます


昭和初期の建具越しに眺める庭は、和風のイメージでつくっていただきました。焼杉の外壁や、隣家の瓦屋根にも見事にマッチしています。湘南はカリフォルニアスタイルのお庭も多いのですが、周囲のまちなみとの調和を考えると、我が家は和風の庭にして大正解でした!



▲玄関ホールからの眺め。中から見ても、外に出ても楽しい空間ができました!

 

家づくりあるある、最後は自力でDIY外構

メインスペースの庭は順調に完成。ところが、玄関前のスペースが手付かずのまま残ってしまいました。というのも、苔丸さんにお願いしたかったのですが、予算とスケジュールが合わず断念することに......。引っ越し後2ヶ月が過ぎても、玄関前は防草シートが剥き出しの悲しい光景に。

どうしたものかとインターネットやInstagramを見てみると、同じ状況の家が多いこと! 外構は建築計画の最後になるので、資金・気力ともに尽きてしまうことがよくあるようです。「私たちも、自力でやってみよう」と勇気をもらい、DIY外構初心者でもできそうな砂利敷きと、ちょっとした植栽に挑戦することにしました。

それにしても、砂利は重量があり通販購入は送料がとても高い! ここで大活躍してくれたのが、大船ショッピングモールのホームセンター『コーナン』です。車で砂利を運搬し、ひたすら玄関前に敷き詰めました。植栽は、川崎の『Solso garden』などで購入したヤツデ、ローズマリーなどをアクセントに。最後に、手持ちのオリーブをシンボルツリーとして玄関前に地植えして支柱を建て、なんとか手づくりの外構が完成したのでした。


▲学生時代の図工ぶりに工具や台車を使う不器用夫婦の汗と涙の作品です、笑

まだまだ改良の余地がありますが、その余白が楽しみでもあることに気づきました。夫婦ふたり、激しい腰痛と筋肉痛を労わり合いながら、木々の成長を見守っていきたいと思います。

早速、新入りの木々に小鳥やリスがやってきて、夫婦ふたりと犬一匹の我が家に、賑やかなメンバーが増えたようです。メジロが唄う中、この原稿も、実はこの庭で書いています。今回の番外編の記事が、これから家づくりをする人の参考になれば嬉しいです。きっと、それぞれの愛しい時間を見つけることができるのではないでしょうか。



これまでの連載はこちら▶海街で家づくり

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

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